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『猫について(2)』

20070719

  
その猫は、
どこかへ向かって歩いている途中のように、
見うけられた。

  

秋の風が明らかに爽快さを増す9月半ば過ぎの頃だった。
よく晴れた休日の午前中に、
私は収穫の終わった野菜畑の後始末をして、
庭に散乱した柿の落果を拾っていた。

  

洗濯物を干していた妻が、
「あら、ネコ」と、声を上げた。
一匹の小柄な茶トラの猫が、
ゆっくりと庭を斜めに横切っていくところだった。
妻の声に、こちらを振り向き、
私たち二人を認めたまなざしには、
警戒している様子はなかった。

  

私は、にゃあんと、声をかけてみた。
すると、即座に、にゃあんと返事が返ってきた。
続けて妻も、にゃあんと、声をかけた。
猫も続けて、にゃあんと答える。
私と妻は顔を見合わせ、笑顔になった。

  

私たちは、ゆっくりと猫に近づいた。
猫は逃げなかった。
それどころか、
私のふくらはぎのあたりに頭をこすり付けてきて、
ぐるぐると喉を鳴らした。

  

「可愛いねえ」
妻が猫の頭をなでた。
猫はちょっとだけ首をすくめたが、
妻に触られるままになっていた。
「ノラにしてはきれいだな。ご近所の飼い猫だろう」
私も、猫の背をなでた。
猫は私たちの足の間を縫うように移動しながら、
ぐるぐると喉を鳴らし、頭をこすりつけている。
ときおり、私たちの顔を見上げる様子は、
初めまして、と挨拶しているようである。

  

「お腹が空いているのかしら」
妻が家の中から牛乳を持ってきて、猫に与えた。
猫は戸惑うことなく縁台に飛び乗ると、
小皿に顔を埋めて、ぴちゃぴちゃと音をたて、
牛乳を飲み始めた。

  

「やっぱり、お腹が空いていたのね。
でも、ごめんね。ウチにはネコのエサはないから」
猫は、あっという間に小皿の牛乳を飲み干すと、
縁台から飛び降りた。
軽快な身のこなしが、年齢の若さを感じさせた。

  

猫は庭の中央まで歩いて、
野菜畑の畝を掘り始めた。
真剣な表情で、左右の前足を交互に使っている。
私たちは見慣れぬ猫の行動に釘付けになった。
猫は自分で掘った穴の上に座り、用を足した。
終わると、再び、真剣な表情で穴を埋め戻した。
私も妻も猫を飼ったことはなかった。
それゆえ、日常的で単純な排泄行動さえも物珍しかったのだ。

  

猫は敷石の上に座り、毛づくろいを始めた。
首を伸ばして、自分の背中を舐める様子は、
オモチャのような動きで楽しかった。
私たちは笑いながら、猫の動きを見守っていた。

  

私は庭仕事に戻った。
雑草をむしり、落果した柿の実を拾い、
熊手で落ち葉をかき集めた。
猫は、私の様子を不思議そうに眺めていた。
ちょこんと正座をして、少しクビを傾けながら、
何しているのかな、
何でそんなことするのかな、とでも言いたそうである。
作業の合間に、私がにゃあんと声をかけると、
全身をしぼるようにして、にゃあんと答えを返した。
大きく鳴くときは、目をつぶるようである。
そんなことを何回か繰り返していたが、
ふと気づくと、いつの間にか猫は姿を消していた。

  Dsc00693

      

   

   

   

      

    

以下、次号。
(人事制度の導入は、9月再開予定です)

  

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