『猫について(5)』
20070813
我が家の庭に遊びに来る猫の素性は、
依然としてわからなかった。
ある日、私と妻が外出から帰ると、
猫は我が家の門扉の上に乗っていた。
それを見つけた隣家の奥さんが、
「あら、可愛いお出迎えね」
「最近、よく遊びに来るんですけど、
どちらのお宅の猫かご存じないですか?」
「知らないわ。見たことないわね」
この奥さんは、近所の顔役で愛犬家だ。
その後、庭で用を足されて猫に敵意を持っていることが判明するが、
見たことがないというのは嘘ではなさそうだ。
床屋のおばあちゃんの証言から、
近所にはノラが多いこともわかった。
しかし、この猫は見た目がこぎれいなのだ。
全身が明るい茶色一色の典型的な茶トラだが、
薄汚れた感じはなく、
毛玉がこびりついているようなところもない。
ただし、外猫暮らしのせいか、肉球は黒ずんでいた。
股間に目立つものはなかったので、
メスであろうとは推測された。
妻が庭に洗濯物を干し、
私が庭木を切ったり、
網戸を洗ったりして庭に出ていると、
いつの間にか、どこからともなく現れるようになった。
にゃんにゃんと呼びかけると、
にゃあ~んと鳴きながら近づいてきて、
ぬれ縁に飛び乗り、
さあ撫ぜろというように頭を押し付けてくる。
私と妻の愛撫をしばらく受入れてから、
何かないのかと舌をぺろぺろと動かす。
妻が牛乳に加えて、
ちくわや魚肉ソーセージなど、
猫の好みそうなものを買ってくるようになった。
猫はそれを当然のように食べ、
身づくろいをして、寝に入る。
すやすやと眠る姿を私と妻が目を細めて眺めている。
猫は日中に我が家を訪れ、
夕方にはどこかに行ってしまう。
恐らく自宅があるのだろうと、
これはこれで責任のない気楽なペットとの関係を楽しんでいた。
ところが、ある日、夜半過ぎに現れた。
秋も深まった頃で、ぬれ縁のある座敷には雨戸を立て、
そろそろ就寝しようとしていた頃合いだ。
雨戸を通して、
いつものあの猫の、
にゃあ~ん、にゃあ~んという声が聞こえた。
このあたりは、古い住宅街で大通りからも離れているので、
夜も8時9時を過ぎると、物音ひとつなく静まり返っている。
その静けさの中を、にゃあ~ん、にゃあ~んが響き渡った。
妻が、入れてあげようかと窓を開けようとしたが、
私は承知しなかった。
以下、次号。
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コメント
東京大田区の愛猫家です。
おもしろいです。
次回も楽しみにしています。
投稿: 愛猫家 | 2007年8月13日 (月) 23時10分