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『猫について(6)』

20070820

    

初めて夜半過ぎに訪れた猫を、
私は室内に入れることを拒んだ。

    

妻は納得がいかないようだった。
「あの猫はメスだ。家に上げて、子猫が生まれたら、どうする?」
「そんなの直ぐにありえない。ほら、あんなに鳴いてる」
猫のにゃあ~ん、にゃあ~んという声は途切れなく響いていた。
「いつも大歓迎していたから、ここに落ち着いて、
子供を生もうとしているのかもしれない」
「大丈夫だよ。どこかの飼い猫だから」
「いや、一度家に上げたら、居ついてしまうかもしれない」
「可哀そうだから、ミルクだけでもあげていい?」
「だめだ。ともかく、夜、家に上げるのはやめておこう」
猫はしばらく鳴き続けていた。
私と妻は息を潜めて、じっと居留守を使っていた。

   

猫は翌日の夜もやってきた。
ぬれ縁に飛び乗るどしんという音がする。
そして、家の中にいる私たちに、
にゃあ~ん、にゃあ~んと呼びかける。

   

私と妻がこれだけ真剣に議論をしたことはなかった。
あの猫が居ついて、子猫を5匹も10匹も生んでしまったら。
盛りの時期はまだのはずだから、ひとまず入れてあげよう。
どこかの飼い猫かもしれないのに、夜泊めるのはまずい。
帰る家がないのかもしれない、お腹も空いているに違いない。
堂々巡りの夜が3晩だったか、4晩だったか過ぎ、
ある夜、私が折れた。

   

毎晩訪れてくる猫が不憫に思えたし、
何より、日中に過ごす猫との時間に、
私自身が魅了されていたからに他ならない。
あいつと一緒に眠れたら……。
それは、この後、起きるかもしれないやっかいなことも、
無視できる甘美な誘惑だった。

   

妻が窓のサッシを開け、網戸を開け、雨戸を開けた。
猫は何の迷いもなく、家に入ってきた。
室内を物色し、自分の匂いをこすりつけ、
私たちの周りを回って、ぐるぐるとのどを鳴らした。
妻が頭を撫ぜると、黒目勝ちな瞳で見上げている。
妻は猫をケメ子と名づけた。
妻がチクワを千切って投げると、
ケメ子はそれを一心不乱に追いかけた。

   

そんなにチクワが好きなのか。
よしよし、たくさんお食べ。
いつの間にか自分たちのことを、
ほら、お母さんが投げるよ、
今度は、お父さんが投げるよ。

   

ケメ子を受け入れるかどうかの意見の不一致により、
ギクシャクしかけた夫婦の関係も好転したようだ。
ところが、猫は、いやケメ子は、
すぐに、チクワを追いかけなくなった。
7、8回くらい投げただろうか、
時間にしたら、1分と少しくらいだったはずだ。
猫は飽きっぽいというが、まさにその通り。

   

チクワに飽きたのか、満足したのか、
ケメ子は器用に体を折りたたみ、
自分の腹のあたりを舐めている。
これも、また、一心不乱に舐めている。
「ケメ子は体が柔らかいなあ」
ケメ子の体は自然と大また開きの体勢になっていた。
ふと、股間に目をやると、
なにやら真っ赤なツマヨウジのようなものが頭をのぞかせている。
ケメ子は、オスだったのだ。

    

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以下、次号。
(人事制度の導入は、9月再開予定です)

   

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コメント

なかなか人になれた甘え上手な猫ちゃんですね。
去勢されていたのですね。
おなかを見せて身づくろいしているのは、
リラックスしている証拠です。


投稿: 愛猫家 | 2007年8月20日 (月) 21時31分

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